『この世界の片隅に』――失われたものを思うこと

その戦争が終わったとき、すずは怒っていた。
「なにが総力戦だ。まだここに5人も残ってるのに。左手も両足もあるのに」と。
家族を体を食物を、すべてを奪う争いについに終止符が打たれたというのに、すずは怒っていた。
 
すずはとりわけ愛国者というわけではない。勝敗にこだわるタチでもない。
それにも拘わらず、すずはこみ上げてくる怒りを抑えられずにいた。
 

 
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2015年を振り返る――「J-POP2.0」によせて

「堂々とした」アーティストが増えたなあと、感じる一年だった。
 
逆にいえば、00年代後半以降、自信がないことの裏返しのように、過激な音や言葉で間を埋めるアーティストが多かったように思う。
そんな彼らの態度の根底にあったのは、邦楽が洋楽の模倣でしかないというアイデンティティの不在ではなかったか。
 

 
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