『きみの鳥はうたえる』の原作と映画の違いについて

『きみの鳥はうたえる』(2018)
監督:三宅唱


 
佐藤泰志小説の四本目となる映像化作品である。
共同生活をする「僕」と静雄、それに「僕」の同僚で、恋仲となる佐知子。
三人は夜な夜な飲んでは騒いでいたが、そんな彼らの夏は永遠には続かなかったーー。
 

 
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『この世界の片隅に』――失われたものを思うこと

『この世界の片隅に』(2016)
監督:片渕須直


 
その戦争が終わったとき、すずは怒っていた。
「なにが総力戦だ。まだここに5人も残ってるのに。左手も両足もあるのに」と。
家族を体を食物を、すべてを奪う争いについに終止符が打たれたというのに、怒っていた。
 
すずはとりわけ愛国者というわけではない。勝敗にこだわるタチでもない。
にも拘わらず、彼女はこみ上げてくる怒りを抑えられずにいた。
 

 
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李相日『怒り』ーー物語の悲鳴

『怒り』(2016)
監督:李相日


 
近年稀に見る映画豊作の年になっている。
7月には『シン・ゴジラ』、8月には『君の名は。』と久々の邦画の大ヒットに恵まれたが、李相日監督の『怒り』も前評判ではそれに劣らない。
日本アカデミー賞を数多くの部門で制した『悪人』の吉田修一・李相日の原作者・監督コンビで、キャストにも渡辺謙、宮崎あおいを筆頭に日本屈指のメンバーが並ぶ押しも押されぬ話題作である。
今年度も各賞のタイトルレースに加わってくることに間違いはないだろう。
 

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入江悠『太陽』

『太陽』(2016)
監督:入江悠


 
大人になってもスプラッタ映画が苦手で仕方ない。
鑑賞すると相当に消耗するので、怪しいものはできるだけ見ないようにしているのだが、ごくまれに事前の予想を裏切るバイオレンスを挿入してくる作品があって、それらは心の準備ができない分余計にタチが悪い。
 
入江悠監督の『太陽』はまさにそのタイプの映画で、鑑賞後にはどっと疲れる羽目になった。
ただ、その疲れの質は少し特殊で、スプラッタのそれが純粋に体力を消耗させるとすれば、『太陽』はむしろ精神を消耗させる、と言い表したくなる作品である。
 

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