2016年の邦楽を振り返る

気付けば二月になっていて、もうそろそろやめにしてもいいんじゃないかなあ、と思いつつも、今年もどうにかこの投稿に至りました。
年々、何をするにも億劫になっていって、めぼしい思い出もなくなってきているのですが、
せめて、その時何を好きだと感じていたのか、後でそれくらいは振り返ることができるように、本年もどうにか立ちはだかっていきたいと思います。
そういうわけで、2016年印象に残った邦楽を総括します。
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『この世界の片隅に』――失われたものを思うこと

その戦争が終わったとき、すずは怒っていた。
「なにが総力戦だ。まだここに5人も残ってるのに。左手も両足もあるのに」と。
家族を体を食物を、すべてを奪う争いについに終止符が打たれたというのに、すずは怒っていた。
 
すずはとりわけ愛国者というわけではない。勝敗にこだわるタチでもない。
それにも拘わらず、すずはこみ上げてくる怒りを抑えられずにいた。
 

 
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李相日『怒り』――物語の悲鳴

近年稀に見る映画豊作の年になっている。
7月には『シン・ゴジラ』、8月には『君の名は。』と久々の邦画の大ヒットに恵まれたが、李相日監督の『怒り』も前評判ではそれに劣らない。
日本アカデミー賞を数多くの部門で制した『悪人』の吉田修一・李相日の原作者・監督コンビで、キャストにも渡辺謙、宮崎あおいを筆頭に日本屈指のメンバーが並ぶ押しも押されぬ話題作である。
今年度も各賞のタイトルレースに加わってくることに間違いはないだろう。
 

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許す、許さない

5月27日、任期の終了が迫るオバマ大統領がアメリカの歴代大統領として初めて広島訪問を果たした。
オバマ大統領は夕方過ぎに広島の地に降り立ち、広島平和記念資料館を訪れ、平和記念公園で原爆死没者慰霊碑に献花し、そして17分に渡るスピーチを行った。
このわずか一時間足らずの歴史的な訪問に、日本人はずいぶん好意的な印象を抱いたらしい。
 
  
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入江悠『太陽』

大人になってもスプラッタ映画が苦手で仕方ない。
鑑賞すると相当に消耗するので、怪しいものはできるだけ見ないようにしているのだが、ごくまれに事前の予想を裏切るバイオレンスを挿入してくる作品があって、それらは心の準備ができない分余計にタチが悪い。
 
入江悠監督の『太陽』はまさにそのタイプの映画で、鑑賞後にはどっと疲れる羽目になった。
ただ、その疲れの質は少し特殊で、スプラッタのそれが純粋に体力を消耗させるとすれば、『太陽』はむしろ精神を消耗させる、と言い表したくなる作品である。
 

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